在宅での緩和ケア : がん患者さんが自宅で過ごす方法
こんにちは、もみじ在宅診療所 院長です。
今回は在宅医療、
特にがんの患者さんについて書いてみたいと思います。
当初から、もみじ在宅診療所の診療の中心である在宅医療。
その中でも特に経験を必要とし、
対応が難しいのががん患者さんの診療です。
がんと診断された場合、ほとんどの方は病院で治療を行います。
可能であれば、
入院し詳しい検査を行った後、治療方法が決定されます。
これらの治療は集学的治療と呼ばれ、
がんを根治することが第一の目標となっています。
日本の病院およびドクターはこれら治療に関しては非常に優秀で、
多くの病院が最新のエビデンスに基づいた治療を行っています。
私自身の経験からも自信をもって
”病院では、とても優秀な先生方が一生懸命患者さんに治療を行っている”
と言うことが出来ます。
しかし現実には、根治できる“がん”ばかりではありません。
- 手術後に再発する
- 抗がん剤を繰り返してもがんが進行してしまう
- 全身状態がよくないため、治療が難しくなる
- 治療がつらい、または副作用のため治療継続ができない
- 気力が続かない
など、様々な理由で“がん”と付き合うことを余儀なくされることもあります。
この段階での対応が最も難しいところなのです。
具体的には、
- 治療を継続している病院に外来通院しているが、再発を指摘された。
- 数ヶ月ごとに検査をするが、徐々に病気は進行していく。
- 定期的に外来通院しており、時に抗がん剤治療などを提案され施行している。
- 外来では今後のことをあまり話してもらえないが、なんとなく今のままで良いのだろうか?
このような状態です。
病院で、はっきりとしたことは言われていないが、
”がん”と付き合っている状態を肌で感じている。
とてもあいまいな状態なのです。
ほとんどの患者さんは、そのまま病院への外来通院を続けます。
- 徐々にしんどさ、だるさ、食欲の低下が続き、何となく家にこもるようになる。
- 家の中でも、食後にはすぐ横になる。
- なんとなく一日中横になっている。
- 体の痛みが出てくる。
- でも、話をすればしっかりしているし、ご家族からは以前とあまり変わらないように見える。
「年をとってだらだらしているのだろう、気力の問題だ。」と言われてしまいます。
数ヶ月~数年間、これらの状態が続いた後、限界になれば突然入院になります。
そのとき初めて、ご自身にがんの緩和ケアが必要な事を説明されます。
ターミナルケアについてのお話も聞き、”寝耳に水”に近い状態となりながら、自宅やホスピスなど今後過ごす場所の決断を迫られます。
当院には、上記の経過で相談に来られる方が多くおられます。
結果、在宅医療を導入され自宅での緩和ケア、看取りを含めた関わりを多く経験させて頂いています。
ただ、がん患者さんの診療のなかでいつも感じることがあります。
それは、
- あいまいな状態で不安を抱えたまま”がん”と付き合う時間が長すぎる。
- ターミナルケアのお話を聞くのがすこし遅い。
- 余命数ヶ月と言われてからではなく、もっと早く相談してもらえればもっと良い緩和ケアができるのに、
などです。
がん患者さんが納得して自宅で過ごすためには、
早くから緩和ケアのドクターと関わることがとても重要です。
良いケアマネージャーさんと心通じておく必要があります。
”がんと付き合っている状態”になったと肌で感じたら、当院外来にいつでもお越しください。
病院の外来通院と並行し、当院外来で緩和ケアについて相談して頂くことも可能です。
月に1回でも外来受診しお話をすることで、
あいまいで不安なまま”がん”と付き合う時間が緩和されるのではないかと思います。