もみじのひと言

在宅医療ってとても奥が深い!院長として長い間在宅医療に関わるなかで、日々感じることを書いています。

自己紹介4

自己紹介、まだまだ続きます。

 

今回も、医師になって2~3年目。

ある大阪城の近くの市中病院に配属された時のお話です。

 

 

私は現在、呼吸器を専門としています。

それは、研修医時代にある先生と出会ったことがきっかけでした。

 

先生の名前は ”川ちゃん先生”、

上の先生も研修医も、皆いつも 川ちゃん、川ちゃん・・ と呼んでいました。

 

親しみやすく人好きで、人と話すのが大好き。

でも、まっすぐな性格で、

筋の通らない事があると、院長など偉い先生にもよく噛みついていました。

 

ご本人は呼吸器外科部長です。

呼吸器科の先生が他にいなかったため、呼吸器内科、呼吸器外科とも

すべての呼吸器の患者さんを診ておられました。

  

 

その頃、私は20代後半の研修医で、

急性腹症、胃癌や大腸癌、乳癌、呼吸器、心臓疾患、

その他あらゆる症例を経験したくて、毎日病院に泊まり込む生活でした。

 

研修の中心は、消化器疾患を主とする一般内科、外科で、

A先輩やB先輩を含め、

多くの研修医は呼吸器の疾患を、”さわり”程度に受け持っていました。

 

しかし、しばらくすると、

A先輩やB先輩は呼吸器にあまり興味がなかったこともあり、

上手に呼吸器の患者さんの受け持ちを外れていたのです。

 

結果、私がほとんどの呼吸器の患者さんを受けもつことになりました。

 

 

夜中にお腹がすいて、病院の食堂で焼きそばのカップ麺を作っていると、

よく、どこからともなく川ちゃん先生が現れました。

 

強烈な焼きそばのにおいをかぎながら、

「毒ほどうまい!」と言って、

横で自分も焼きそばを作り、たべていました。

 

そうこうするうちに、

呼吸器疾患の歴史、検査や診断、治療法など

呼吸器についての知識を詳しく教えてもらえるようになったのです。

 

肺癌の手術にもよく一緒に入れてもらい、

多くの先輩が触らせてもらえないところまで

こっそりと触らせてもらえました。

 

今考えると、いわゆる ”えこひいき” ですが、

”えこひいき” によってとても成長させて頂けたのだと思います。

 

 

その後、次の研修先を悩んでいたときに

川ちゃん先生が教えてくれました。

 

「呼吸器に興味があるのなら、大阪ではoo医療センターがいいと思う。

呼吸器、特に肺癌については大阪で最も症例が多い病院の一つだよ。

そこの呼吸器外科のF先生はとても手術が上手だから、次はそこで研修したら!」

 

将来、君が立派な呼吸器科の医師になったら、また一緒に仕事をしよう!

といって送り出してもらい、その病院での研修は終了しました。

 

 

その後、私はレジデントとしてoo医療センターに就職することが出来たのですが、

数年後、突然川ちゃん先生の訃報を耳にしました。

 

毎日の激務の中、仕事中に突然帰らぬ人となったとお聞きしました。

医師、特に外科医にはよくあることなのですが、

仕事に追われ、患者さんの事ばかり考えて、自分の健康がおろそかになってしまう。

 

とても残念で、今でも尊敬する川ちゃん先生のことは忘れられません。

 

今の自分が

呼吸器を専門にしていること

外科医では無く、開業医として働いていること

すべて、川ちゃん先生との出会い、別れによって起こった出来事だと思います。

 

今の自分は川ちゃん先生とほぼ同じ年齢です。

医師として、

川ちゃん先生に少しでも近づけていれば、幸せだと思います。